祝 婚
台所へおりてきたときイエスは目もとをほんのりと赤く染めていた愛らしいはなよめはなむこの婚礼を祝って気持ちよく酔ったのだったかめの水をすくいごくリとのどをならして飲んだそれからかべに背をもたせかけてすやすや眠りかけたイエスや ちょっと と小走りにかけてきたマリアが 肩をたたいたかあさん なあに?お酒が足りなさそうなんだけどそんなことかあさんが気をもむことないだろうぼくは ねむくって……おおい 酒をもってこい酒はどうした酒がねえぞ!どなり声でイエスは眼をさまされた歌声がきこえる皿をたたきながらまのぬけたふしまわしだ笑いが起こる手拍子がまじる祝宴はまだまだつづくらしい酒をもってこいまた どなる声給仕の少年があおくなって駆けこんできたとろんとねむいイエスの頬に微笑がひろがったきみ そのかめの酒をくんでもって行きたまえでも これは 水で……いいから においをかいでみたまえあっ こ これはいつのまに水がぶどう酒に?あわてて料理頭をよびに駆けだした少年のうしろすがたをみおくるとイエスは自分の用事はすんだとばかりそのまま また壁によりかかりあくびひとつするまもなく眠りこけたそして もうだれが起こしても眼をさまさなかっただからそれから ふしぎなぶどう酒で台所じゅうが大さわぎになったことも婚礼の客たちがこんなにうまいぶどう酒は生まれてはじめてだと感嘆 敬服したこともイエスは何も知らなかったイエスは酔っぱらいの無礼をもとがめず主人側の酒の用意の足りなかったことをもとがめず彼は ただ仮眠のゆめのなかでめでたいめでたい婚礼を祝い愛らしいはなよめはなむこのしあわせを祈っていたのだった(ヨハネによる福音書2・1〜11)